小説家になった“古のオタク”が未だに「個人サイト」を勧めてる理由とその運用方法

目次
懐かしい個人サイトは「時代遅れ」なのか? #
現代、多くのクリエイターは、手軽に始められる小説投稿サイトや巨大なSNSプラットフォームを選びます。「人も来ないのにわざわざ手間のかかる個人サイトを持つなんて」と思うのも当然と思います。
しかし、個人サイトが持つ力には、SNSや投稿サイトにはない決定的な強みがあります。私が「古のオタク」だから「個人サイトが好き」っていうのも確かに否めないのですが、、「昔は良かった」ってただただ言いたいというわけでもなく、きちんと理由があります。
本記事では、現代のネットの恩恵も受けつつ、あえて自分の「個人サイト」を構えることの合理的なメリットを整理しました。また、私が実際に運用している「Hugo」を使ったサイト等、現代小説の公開におすすめな個人サイトづくりについても触れていきます。
一見、執筆には関係なく「創作プロセスの解剖学」シリーズには異色に見えるかもしれませんが、読んでいただければ「個人サイト」が小説家としての私のプロセスの大切な一部とご理解いただけるのではないかと思います。
投稿サイトと個人サイトを併用するモチベーション #
まず前提として、私も小説投稿サイトを活用しています。カクヨムや小説家になろう等では、投稿した作品を他のサイトで公開することを禁止していないからです(投稿の際は必ず各サイトの規約を確認してください)。下記は私がやっている行動の流れと執筆モチベーションの変化です。
| 行動 | モチベーション | |
|---|---|---|
| 1 | 作品を書き始める | 書き始めたばかりなのでサクサクと進みます |
| 2 | 個人サイトに1話ずつ連載する | 公開することで、作品が自分の頭だけではなく、きちんと形になって世の中に存在した感じがします |
| 3 | 作品を完結させる | 終わりまで書けた達成感を得られます |
| 4 | 小説投稿サイトなどに連載する | すでに完結しているため、書けなければ休載してしまうというプレッシャーがありません |
| 5 | 小説投稿サイトでの評価を見る | 該当の作品は完結できているので、評価がなくても、すでに書き始めている次作のモチベーションになります |
この表から読み取っていただける通り、個人サイトでの作品公開は、私の執筆活動と連動しています。
個人サイトを勧める理由 #
個人サイトが私の執筆モチベーションになっていることはなんとなくわかってもらえたと思いますが、具体的な理由を紹介します。
コツコツと書いて公開するのに向いてるから #
私もネットで小説を公開しようと思ったとき、当然のように大手の小説投稿サイトを検討しました。むしろ、最初はその方法しか考えていませんでした。
しかし、何話か書いてそろそろどこかに公開してモチベーションあげたいなと思ってから気になったのは小説投稿サイトの閲覧数やランキングです。せっかく投稿するんだから沢山の人に見てもらいたい、ならば最初のイメージが大事、と考えて、閲覧数を増やしたりランキングに掲載される方法をいろいろと調べました。
すると、極端な例では◯話目までにランキング載らなければ書くのを止めて新たな作品を書き始めるという方法をとる人までいるなど、どうしても数字が気になってしまう「人の心理」的には、小説サイトへの投稿は作品と向き合うより評価と向き合うような場所なのかもしれない、と思いました。もちろん、小説投稿サイトにおいても、作品と向き合ってる人が大半ですが、心理的なコントロールはどうしても難しいので、大事な作品を初っ端からいきなり小説投稿サイトに掲載するというのはあまりおすすめしません。
一方、個人サイトであれば、「作品を公開する」ことによる執筆モチベーションを保ちつつも、数字が気になるということもなく、静かに書き進めることができます。作品が完結してから小説投稿サイトにも掲載させるという順番でも全く問題ありません。そうすれば、執筆と評価を別の軸で捉えることができます。
とは言え、結果的に投稿サイトでの評価も上がりやすいから #
また、先程私の行動の流れの表でも示したように、この「個人サイト→小説投稿サイト」という投稿順には個人サイトで完結・もしくはかなりの話数をすでに書いていれば、投稿サイトに連載し始めても「筆が止まってしまって休載にならざるを得なくなる」というリスクがほぼなくなりますよね。これ、実はプレッシャーやモチベーション以外のメリットにも繋がっており、ある程度のスピード感で定期的な連載を進めたほうが読者も付いてきやすい為、小説投稿サイトでの評価も比較的上がりやすくなります。
私が主戦場としている現代小説というジャンルは特に投稿サイトではかなりの弱小で埋もれてしまいがちだし、異世界モノ等の人気ジャンルは逆にジャンル内での熾烈なランキング争いがあります。
逆に、ランキングに乗らなくても「数人に見てもらえればいいや」「公開さえできれば問題ない」という人には、ここまでの私の説明はあまりピンと来なくて、初っ端から小説投稿サイトでもいいのかもしれません。むしろ、そっちのほうが手っ取り早くて良さそうです。しかし、そんな人にも後回しで大丈夫なんで個人サイトも持ってもらいたいのです。モチベーション維持やランキングに乗る戦略以外にも理由があるからです。
思い通りのイメージで作品を置いておけるから #
小説は、文章だけでなく、存在している「環境」も作品の一部です。カクヨムや小説家になろう等、投稿サイトは様々あり、そこから生まれた作品に影響されたり、投稿数の多いジャンルに色付けされたりするので、各プラットフォーム自体のイメージがあります。
これが個人サイトであれば、せいぜい作家自身のイメージしかありません。名の知れない作家であれば、読者は何の先入観もなく作品自体と向き合ってくれるのです。
サイトづくりの詳細は後述しますが、私はジャンルを問わず様々な作品を書きたいため、この「先入観のない」状態でいてほしいと思っており、私の個人サイトはかなりシンプルなサイトデザインにつとめています。逆に、作家性としてブランド作りを固めたいならこだわったサイトのイメージを持たせることも可能になります。
作品ごとにカスタマイズも可能です。
また、小説投稿サイトは広告費によって運営されていますが、その影響で意図しない広告が作品ページに現れます。特にバナー広告は元々目をひくように意図されてデザインがなされているため、読者はかなり引っ張られます。作品に集中してもらうためにも、作品のための場所をつくってあげたいのです。
「個人サイトをつくって作品を置く」のを、私がテンション上がる言い方にすると、「自分の作品を揃えた、静かな書斎を提供している」イメージなのです。
個人サイトは個性的であり、見るのも作るのも面白いから #
「私が『古のオタク』だから『個人サイトが好き』っていうのも確かに否めないのですが、、『昔は良かった』ってただただ言いたいというわけでもなく」って冒頭で言ったものの、個人的な好みであることもやはり個人サイトを勧める理由のひとつなので少しだけ語らせてください。
SNSや投稿サイトがなかった時代には絵描きも物書きもみんな個人のサイトを持って作品を並べていたものです。そのサイトはどれもデザインから名前まで個性的で没入感たっぷり。サイトを訪問するだけで面白さがありました。
これは街に個人商店がなくなり、ショッピングモールに集約されていった流れと似たものを感じます。
小説公開のための個人サイトをつくるには #
「現代ではHTMLタグベタ打ちなんてことしません!」みたいな誰でも知ってる説明は省きます。余談になりますが、そんな時代の後は、ブログが流行り始めたのが20年くらい前、その後WordPressが出てきましたね。手軽にサイトが作れるようになったそのあたりまではサイトを持つオタクもまだいたけど、PixivやTwitterが出始めてからは一気に流れていった気がします。
そんな経験をしてきた個人サイト出戻り勢の古オタクにも、若い物書きさんにもおすすめのサイト作成方法をご紹介します。
小説家から見た個人サイトづくりの選択肢 #
個人サイトを持つ方法は様々ありますが、ここでは、「小説を掲載する」という観点からのおすすめです。
- WordPress【おすすめ度★☆☆】
あまりにも有名なので詳細は割愛しますが、レンタルサーバーに自動でインストールできたりするので、便利ですよね。テンプレートもたくさんあるから自分好みのものを手軽に選べるし、カスタマイズできるので、小説向けに作品を読みやすくすることができる点が良いです。ブラウザ上で更新でき、テキスト作りもワードのような便利さがある点も魅力だと思います。 - コミュニケーション機能の少ないブログ【おすすめ度★☆☆】
はてなブログやAmebaブログなどはSNSに近く、小説を書いたり読んでもらったりするにはノイズも多いと感じます。Bloggerなど、シンプルなブログサービスであれば、小説をおく個人サイトとして適していると感じます。 - Wix【おすすめ度★★☆】
タグベタ打ちせず簡単にサイト作りができるのが魅力です。WordPressやブログ等のように「記事を載せるサイト」に特化していないので昔の個人サイトのように自由な表現をしたい方には一番向いていそうです。 - Hugo等の静的サイトジェネレーター【おすすめ度★★★】
最初はとっつきにくく感じることもあると思います。HTMLベタ打ちも静的サイトなので、昔個人サイト持ってたという人に特におすすめしたいです。WordPressのようにテンプレート(テーマ)がいろいろあるので、好みのものを選んでカスタマイズできます。
私は小説の個人サイトでも、このHugoを気に入って使っているので、さらに紹介していきます。
小説サイトとHugoの親和性 #
Hugoには小説公開のための個人サイトとしてのメリットが様々あります。
表示が速い・軽い #
WordPressは動的サイトと言われ、実は読者が来る度に自動でサイト構築の動きがあってから表示されています。Hugoは用意したページをそのまま見せるだけ、という仕組みになっているので、特に小説サイトはテキストだけなので、アクセスした瞬間くらいで表示される体感です。訪問してくれる人には作品をストレスなく読ませたいので、このあたり「理想通り」って感じです。
無料・広告無しが可能 #
Hugoはサーバーレスなので、レンタルサーバーを用意しなくてもサイトが作れます。私も最初、この説明聞いて意味わかんなかったんですが、本当にサーバーがいらないんです。なので、広告表示のない無料のホスティングサービスを選ぶことができます。
独自ドメインで運用したい場合にも、ドメイン代だけで運用ができるのです。
何度も書く内容をパーツ化できる #
ここまでの説明では「タグベタ打ちサイトと変わらない」と感じたかもしれませんが、大きな違いはここです。
小説を書いていると「注意書き」「登場人物紹介」など、各ページに同じ内容書く必要が出てくることもあると思いますが、Hugoではこれをパーツとして用意しておき、簡単な指示で呼び出して置いておくことができます。後から変更したいときも、各ページを手作業で変更することなく、パーツだけを編集すれば、すべての箇所が同じように変更されるという仕組みです。
ローカル環境で編集できる #
ネットが繋がる状態で小説を書いたり編集していると、すぐ作業が脱線してしまわないですか?Hugoはローカルでサイトを作るので、小説を書くにもノイズが減ります。集中力の途切れやすい私が特に気に入ってる点です。
プレーンテキストの表示が楽 #
小説って、そんなに文字装飾しないこと多いですよね。先程WordPressのメリットとして、ワードみたいにテキスト編集できるって言ったものの、私はプレーンテキストで構わないので、実際のところそんなに魅力は感じません。HTMLベタ打ちのように「ここを〇〇タグで挟まないといけない」みたいなことはなく、小説であれば書いたテキストをそのまま使うことができます。WordPressと比較して、画面がガチャガチャした印象もまったくなく、メモ帳アプリに書いてる感覚でサクサク進みます。
作品別の目次ページが一瞬でできる #
各話ページを入れた作品フォルダにindexファイルを作成するだけで、各話ページへのリンクが載ったページが自動で構成されます。
作品ごとにフォルダ分けしておけば、作品ごとの目次ページが瞬時に作られます。
この記事の要点 #
- 執筆の流れ: 個人サイトで連載しながら書き、完結してから小説投稿サイトに載せると、「書き切るモチベ」と「評価・数字」の軸を分けやすい。
- 個人サイトの役割: 閲覧数やランキングに振り回されにくく作品と向き合える。自分のイメージで作品を置ける「静かな書斎」になり、読者にも先入観の少ない入口になる。
- 作り方: WordPress・ブログ・Wix・Hugo など選択肢はある。小説公開なら表示が速い・パーツ化しやすいなどの理由から、 Hugo を勧めている。
小説家の個人サイトは自分を示す書斎 #
個人サイトという拠点を持つだけで、小説家としての存在を明確化でき、いわばその書斎の中で自分のペースを守りながらの執筆が可能になります。
小説を書くサイクルに、ぜひ個人サイト作りを取り入れてみてください。